「よし、車中泊を始めてみよう!」そう思って、最初に思い浮かぶアイテムの一つが「寝るためのマット」ではないでしょうか。でも、いざ探してみると種類の多さにびっくり。「インフレーター? エア? ウレタン? 何が違うの?」「厚みはどれくらいがいいの?」「そもそも、本当に必要なの?」そんな疑問が次から次へと湧いてきますよね。
この記事は、そんな車中泊マット選びの「?」を「!」に変えるための、特定の“商品”を一切紹介しない、お役立ち情報だけを詰め込んだ教科書です。ランキングやおすすめ商品を眺める前に、まずは「自分にとって本当に必要なマットは何か」を見極めるための“知識”と“判断基準”を身につけませんか?
この記事を読み終える頃には、あなたにピッタリのマットがどんなものか、その輪郭がハッキリと見えているはずです。さあ、最高の車中泊ライフへの第一歩を、ここから踏み出しましょう!
車中泊マットの基本|なぜ「専用」がいいの?
まず最初に、「そもそもなんで車中泊に“専用の”マットが必要なの?」という根本的な疑問から解決していきましょう。「家の布団じゃダメ?」「キャンプ用の銀マットで十分じゃない?」そう思う気持ち、よくわかります。しかし、車中泊には特有の事情があり、それに合わせたマットを選ぶことが、快適な睡眠への一番の近道なんです。
車中泊マットの重要な役割
車中泊マットは、ただの敷布団ではありません。車内という特殊な環境で、質の高い睡眠を確保するために、いくつもの重要な役割を担っています。
役割1:睡眠の質を格段にアップさせる
何と言っても一番の役割はこれです。硬くて凹凸のある座席の上で、薄いブランケット一枚で寝るのを想像してみてください…おそらく、体のあちこちが痛くて何度も目が覚めてしまうでしょう。車中泊マットは、適度なクッション性で体圧を分散し、まるで自宅のベッドのように快適な寝心地を生み出してくれます。旅の疲れを翌日に持ち越さないためにも、睡眠の質は絶対に妥協できないポイントです。
役割2:体の負担を減らす
特に重要なのが腰への負担です。車のシートは、座ることを前提に設計されているため、寝るには不向きな凹凸や傾斜がたくさんあります。マットなしで寝ると、腰が沈み込んだり、不自然な姿勢になったりして、朝起きたら腰が痛い…なんてことになりかねません。十分な厚みのあるマットは、これらの凹凸をフラットにし、体をしっかりと支えてくれるため、腰痛などのリスクを軽減してくれます。
役割3:地面からの冷気・熱気をシャットアウト
見落とされがちですが、これも非常に重要な役割です。特に寒い時期、車のフロアは地面からの冷気をダイレクトに伝えてきます。これを「底冷え」と呼びますが、どれだけ暖かい寝袋を使っても、背中からシンシンと冷えてきては快適に眠れません。逆に夏は、アスファルトの熱が車内に伝わってきます。車中泊マットは、地面と体の間に空気の層を作ることで、強力な断熱材として機能します。これにより、冬は暖かく、夏は涼しく(地熱を遮断する、という意味で)過ごすことができるのです。
役割4:車内の凹凸を解消する
シートを倒して「フルフラット」にしても、実際にはシートベルトの金具があったり、シートとシートの間に隙間があったりと、完全な平面にはなっていないことがほとんどです。薄いマットではこれらの凹凸を吸収しきれず、寝ている間に気になってしまいます。厚みのある車中泊マットは、こうした細かな凹凸をものともせず、快適なベッドスペースを作り上げてくれます。
マットなしで寝るとどうなる?
もし、マットを使わずに寝袋だけで車中泊をしたらどうなるでしょうか。経験したことがある方なら「もう二度とやりたくない」と思うかもしれません。
- 体の痛み:背中、腰、肩など、シートの硬い部分や凹凸が当たる場所が痛くなります。
- 寝不足:不快感で何度も目が覚め、熟睡できません。結果、翌日の運転やアクティビティに支障が出ます。
- 寒さ・暑さ:冬は底冷えで凍え、夏は背中の蒸れや地熱で不快な夜を過ごすことになります。
- ストレス:快適に眠れないことが、精神的なストレスにつながります。せっかくの楽しい旅行が台無しになってしまう可能性も。
このように、車中泊マットは単なる贅沢品ではなく、安全で快適な車中泊を行うための必需品と言えるのです。家の布団では大きすぎて車内に収まらなかったり、湿気でカビてしまったりする問題がありますし、薄い銀マットではクッション性が足りません。だからこそ、「車中泊」という用途に特化したマットを選ぶことが大切なのです。
【徹底解説】車中泊マットの種類と特徴
車中泊マットと一言で言っても、その種類はいくつかあり、それぞれに得意なこと、苦手なことがあります。ここでは、代表的なマットの種類を挙げ、その構造やメリット・デメリットを詳しく解説していきます。それぞれの特徴を理解すれば、自分にはどのタイプが合っていそうか、イメージが掴めるはずです。
インフレーターマット
現在、車中泊用として最も主流となっているのが、このインフレーターマットです。「自動膨張式マット」とも呼ばれます。
構造と仕組み
インフレーターマットは、内部にウレタンフォームが入っており、それを気密性の高い生地で覆った構造をしています。収納時は、ウレタンフォームを圧縮しながら空気を抜いて丸められています。使用する際は、バルブ(空気栓)を開けると、圧縮されていたウレタンフォームが元に戻ろうとする力(復元力)で、自動的に空気を吸い込んで膨らむ、という仕組みです。まさに「インフレータブル(膨らませることができる)」なマットというわけですね。
メリット
- 寝心地と断熱性のバランスが良い:内部のウレタンフォームが体をしっかりと支え、空気層が断熱効果を発揮します。クッション性と断熱性の両方を高いレベルで満たしてくれる、非常にバランスの取れたタイプです。
- 準備がある程度ラク:バルブを開けて放置しておけば、ある程度まで自動で膨らんでくれるので、設営が比較的簡単です。
- 厚みのバリエーションが豊富:5cm程度のものから、10cmを超える極厚タイプまで、様々な厚みの選択肢があります。
デメリット
- 完全には膨らまないことも:自動膨張だけでは好みの硬さにならないことが多く、仕上げに口で空気を吹き込んだり、ポンプを使ったりする「追い空気」が必要になる場合があります。
- パンクのリスク:空気を使う以上、鋭利なものが刺さればパンクしてしまいます。そうなると、ただの薄い布とウレタンになってしまい、マットとしての機能はほぼ失われます。
- 収納にコツがいる:空気を抜きながら体重をかけて丸めていく作業は、特に厚みのあるモデルだと、慣れるまで少し力とコツが必要です。収納サイズも、後述するエアマットに比べると大きめです。
- 経年劣化:長年使っていると、ウレタンフォームの復元力が弱まり、膨らむのに時間がかかったり、膨らみが悪くなったりすることがあります。
エアマット
その名の通り、内部にウレタンなどは入っておらず、100%空気だけで膨らませるタイプのマットです。電動ポンプや手動ポンプ、あるいは専用のポンプサック(大きな袋)を使って空気を送り込みます。
構造と仕組み
エアマットの内部は、単なる風船のような空洞ではありません。表面がボコボコにならないよう、内部に多数の隔壁や糸が張り巡らされた「エアコイル構造」や「Iビーム構造」といった工夫が凝らされており、体圧を分散して安定した寝心地を生み出しています。素材はPVC(塩化ビニル)や、より軽量で丈夫なTPU(熱可塑性ポリウレタン)などが使われます。
メリット
- 収納サイズが圧倒的に小さい:内部が空気だけなので、空気を抜けば非常にコンパクトになります。車内の積載スペースが限られている場合に大きなアドバンテージとなります。
- 厚みを出しやすい:10cmや15cmといった、家庭のベッドのような厚みを持つモデルも多く、車のシートの大きな凹凸も完全に無視できるほどの快適なベッドを作れます。
- 寝心地の調整が自由自在:空気の量を調整することで、自分好みの硬さに細かくセッティングできます。
デメリット
- 準備と片付けに手間がかかる:空気の注入・排出が必須です。電動ポンプを使えば注入は楽ですが、ポンプの電源確保や作動音が気になることも。手動ポンプはかなりの労力が必要です。撤収時も、完全に空気を抜くのに時間がかかります。
- パンクに非常に弱い:インフレーターマット以上にパンクには弱く、一度穴が開くと全く使えなくなります。リペアキットは必須アイテムです。
- フワフワとした独特の寝心地:人によっては、このフワフワ感が落ち着かないと感じる場合があります。また、寝返りを打つとマット全体が揺れやすいモデルもあります。
- 断熱性が低いモデルもある:内部がただの空気層だと、中で空気が対流してしまい、地面の冷気を伝えやすくなります。断熱性を高めるために、内部に断熱シートや化繊の綿が封入されているモデルを選ぶことが重要です。
ウレタンマット(クローズドセルマット)
昔ながらのキャンプ用マット、いわゆる「銀マット」をより高性能にしたようなタイプです。空気を使わず、素材そのものの弾力でクッション性を確保します。
構造と仕組み
ポリエチレンなどの素材を発泡させて作られています。内部には無数の独立した気泡(クローズドセル)があり、この気泡が空気を含んでいるため、断熱性とクッション性を発揮します。アコーディオンのように折りたたむ「フォールディングタイプ」と、くるくると丸める「ロールタイプ」があります。
メリット
- パンクしない絶対的な安心感:空気を使わないので、穴が開く心配が一切ありません。岩場や砂利の上など、ラフな使い方をしても大丈夫。このタフさが最大の魅力です。
- 設営・撤収が最速:広げるだけ、たたむだけ。10秒もかからずに準備・片付けが完了します。車中泊地に到着してすぐに寝たい時や、朝早く出発したい時に非常に便利です。
- 軽量で扱いやすい:素材自体が軽いので、持ち運びも楽々です。
- 高い断熱性:内部の独立気泡が空気の対流を防ぐため、非常に高い断熱性能を誇ります。冬場の底冷え対策として、他のマットの下に敷くサブマットとしても活躍します。
デメリット
- 収納サイズが大きい(かさばる):圧縮できないため、収納時の体積は全種類の中で最も大きくなります。車内や自宅での保管場所を確保する必要があります。
- クッション性は他に劣る:厚みはせいぜい1.5cm~2cm程度のものが多く、インフレーターマットやエアマットのようなフカフカの寝心地は期待できません。シートの凹凸が激しい車種だと、これ一枚では快適とは言えないかもしれません。
高反発・低反発ウレタンマット
これは、キャンプ用というよりは、家庭用の敷布団やマットレスに近いタイプです。一枚板のウレタンフォームや、三つ折りにして収納できるものが主流です。
構造と仕組み
インフレーターマットのように生地で覆われておらず、ウレタンフォームそのものがマットになっています。体の沈み込みが少ない「高反発」タイプと、じんわりと体を包み込む「低反発」タイプがあります。
メリット
- 家の布団に近い寝心地:空気を使わない安定感と、ウレタンならではのしっかりとしたサポート力で、普段の睡眠環境に近い寝心地を得られます。特に腰痛持ちの方などで、高反発のしっかりした寝心地を好む人には向いています。
- 準備・片付けが簡単:敷くだけ、たたむだけなので、設営・撤収は非常に楽です。
デメリット
- 収納サイズが非常に大きい:三つ折りにしてもかなりの体積があり、重さも相当なもの。車内のスペースを大きく占有するため、ミニバンやワンボックスなど、積載量に余裕のある車でないと厳しいでしょう。
- 水濡れに極端に弱い:ウレタンフォームは一度濡れると乾きにくく、カビの原因になります。雨の日の設営・撤収や、結露には細心の注意が必要です。
- 断熱性は専門マットに劣る場合も:地面からの冷気を遮断するような特殊な加工はされていないことが多く、冬場の使用には工夫が必要になる場合があります。
種類別特徴の比較表
これまでの内容を、簡単な比較表にまとめてみました。あくまで一般的な傾向ですが、マット選びの参考にしてみてください。
| 種類 | 寝心地 | 断熱性 | 収納サイズ | 準備・片付け | 価格帯 |
| インフレーターマット | ◎ | ◎ | △ | △ | 中~高 |
| エアマット | ○ | △ | ◎ | × | 安~高 |
| ウレタンマット | △ | ◎ | × | ◎ | 安~中 |
| 高反発・低反発マット | ◎ | ○ | × | ○ | 中~高 |
(注:◎…優れている、○…良い、△…やや劣る、×…劣る。寝心地や断熱性は製品によって大きく異なります)
後悔しない!車中泊マット選びの8つのチェックポイント
マットの種類がわかったところで、次はいよいよ「自分に合った一枚」を選ぶための具体的なチェックポイントを見ていきましょう。ここで挙げる8つのポイントを一つずつ確認していけば、きっとあなたにとっての「正解」が見えてくるはずです。大切なのは、他人の評価ではなく、自分の車と自分のスタイルに合っているかどうかです。
ポイント1:最重要!「厚み」
車中泊マット選びで、おそらく最も多くの人が悩むのが「厚み」でしょう。厚みは寝心地に直結するだけでなく、収納サイズや価格にも大きく影響します。
厚みと寝心地の関係
当然ですが、厚ければ厚いほどクッション性が増し、寝心地は良くなります。地面の硬さやシートの凹凸を感じにくくなり、快適性が向上します。しかし、単純に「厚ければ良い」というわけでもありません。厚すぎると、フワフワしすぎて逆に寝づらいと感じる人もいます。
- ~5cm厚:比較的フラットなシートの車種や、積載性を重視する人向け。最低限のクッション性と断熱性は確保できますが、シートの凹凸が大きいと底付き感(体がマットを突き抜けて下の硬い部分に当たってしまう感覚)を感じることも。サブマットとの併用も視野に入れると良いでしょう。
- 6cm~8cm厚:寝心地と収納性のバランスが取れた、最も人気の高い厚み。多くの車種のシートの凹凸をカバーでき、快適な睡眠が期待できます。迷ったら、まずこのあたりの厚みを基準に考えると良いかもしれません。
- 9cm厚~:寝心地最優先派におすすめ。まるで家のベッドのような、極上の寝心地を実現できます。シートの凹凸が激しい車種でも、完全にフラットなベッドスペースを作り出せます。ただし、収納サイズはかなり大きくなることを覚悟する必要があります。
あなたの車のシート形状は?
必要な厚みは、あなたの車のシートがどれくらいフラットになるかによって大きく変わります。まずは一度、実際に後部座席などを倒してみて、手で触ったり、少し横になったりして凹凸の具合を確認してみましょう。「思ったより段差があるな」と感じたら、少し厚めのマットを検討するのが賢明です。
ポイント2:見落とし厳禁!「サイズ(幅と長さ)」
「せっかく買ったのに、車に入らなかった…」「幅が狭くて寝返りが打てない…」なんて悲劇を避けるために、サイズの確認は必須です。
まずは自分の車を計測しよう
マットを選ぶ前に、必ずメジャーを持って自分の車の寝床スペースを実測しましょう。チェックすべきは以下の3点です。
- 使える幅:タイヤハウスの出っ張りや、ドアの内張りなどを考慮して、実際にマットを敷ける最大の幅を測ります。
- 使える長さ:後部座席を倒し、フロントシートを一番前にスライドさせた状態で、バックドアからフロントシートの背面までの長さを測ります。この長さが、あなたの身長より短い場合は、寝る向きを工夫するか、斜めに寝るなどの対策が必要になります。
- 高さの制限:極厚のマットを敷くと、その分天井までの空間が狭くなります。座った時に頭が天井についてしまわないか、圧迫感がないかもイメージしておきましょう。
幅の選び方
一般的に、成人男性が快適に眠るには、最低でも60cm程度の幅が必要と言われています。肩幅が広い方や、寝返りをよく打つ方は、70cm以上あると安心です。2人で寝る場合は、シングルサイズ(約60~70cm幅)を2枚並べるか、ダブルサイズ(約120~140cm幅)を選ぶことになります。車内の幅を最大限に活用したい場合は、車種専用設計を謳うマットに近いサイズを探すのも一つの手です。
長さの選び方
長さは、基本的には自分の身長+10cm~20cm程度の余裕があると快適です。足元や頭がマットからはみ出してしまうと、地味にストレスになります。ただし、車の荷室長が短い場合は、あえて少し短めのマットを選び、頭の部分は枕や衣類で調整するという方法もあります。
ポイント3:現実と向き合う「収納サイズ」
寝心地ばかりを追求して極厚マットを選んだ結果、「大きすぎて車に積めない」「家の収納を圧迫しすぎる」というのも、よくある失敗談です。快適な寝心地と、許容できる収納サイズとのバランスを考えることが重要です。
マットの種類によって収納サイズは大きく異なります。前述の通り、一般的には「エアマット < インフレーターマット < ウレタンマット」の順に収納サイズが大きくなります。自分の車の積載スペースや、他の荷物(クーラーボックス、着替え、調理器具など)との兼ね合いを考え、どこまでなら許容できるかを冷静に判断しましょう。「毎回、無理やり押し込まないと積めない…」となると、車中泊に行くこと自体が億劫になってしまいます。
ポイント4:快適さを左右する「R値(断熱性)」
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、特に寒い時期の車中泊を考えているなら、絶対に知っておきたいのが「R値」です。
R値とは?
R値(R-Value)とは、「どれだけ熱が伝わりにくいか」を示す熱抵抗値のことです。この数値が高ければ高いほど、断熱性能が高く、地面からの冷気(または熱気)を遮断する能力が高いことを意味します。登山や冬キャンプなど、シビアな環境で使われるスリーピングマットには、このR値が必ずと言っていいほど表記されています。
R値の目安
R値は製品によって様々ですが、大まかな目安は以下の通りです。
- R値 1~2:夏場の低地向け。断熱性はあまり期待できません。
- R値 2~4:春・夏・秋の3シーズン向け。日本の多くのキャンプシーンに対応できます。
- R値 4~6:冬の車中泊や、寒冷地での使用も視野に入れたモデル。高い断熱性を持ち、底冷えをしっかり防ぎます。
- R値 6以上:厳冬期の雪中キャンプなど、極めて過酷な環境向けのモデル。
車中泊用のマットにはR値が表記されていないことも多いですが、冬場の利用を考えているなら、「冬対応」「高断熱」といった表記があるか、またはウレタンマットを重ねて使うなどの工夫を検討しましょう。逆に夏場しか使わないのであれば、R値はそれほど気にしなくても良いかもしれません。
ポイント5:寝心地を左右する「素材と生地」
マットの表面に使われている生地も、睡眠の質に影響を与える要素です。
- 肌触り:直接肌に触れることは少ないかもしれませんが、スエード調の起毛素材は暖かみがあり、ポリエステル系のサラッとした生地は夏場でもベタつきにくい、といった特徴があります。シーツを敷いて使うのが基本ですが、生地の質感もチェックしておくと良いでしょう。
- 滑りにくさ:意外と重要なのがこれ。表面がツルツルしていると、寝袋や体が滑ってしまい、夜中に何度も目が覚める原因になります。特に、少し傾斜のある場所で寝る場合は、滑り止め加工が施されていると安心です。
- 静音性:寝返りを打つたびに「ガサガサ」「キュッキュッ」という音がするマットもあります。音が気になる敏感な方は、生地同士が擦れる音が出にくい素材を選びたいところです。
ポイント6:地味に効いてくる「準備と片付けの手間」
旅先での時間は貴重です。マットの準備や片付けに手間と時間がかかりすぎると、地味にストレスが溜まります。
インフレーターマット/エアマットの場合
チェックしたいのは「バルブ」です。バルブの口径が大きいほど、空気の出入りがスムーズになります。また、空気を入れる「吸気」と抜く「排気」が分かれている逆止弁付きのバルブだと、空気を入れている途中に漏れたり、空気を抜く際に再び吸い込んでしまったりすることがなく、作業が非常に楽になります。バルブが2つ付いているダブルバルブのモデルは、さらにスピーディーに準備・撤収ができます。
ウレタンマットの場合
準備・片付けの手間という点では、ウレタンマットが最強です。広げるだけ、たたむだけ。この手軽さは一度体験するとやみつきになるかもしれません。
購入前に、自分が「多少手間でも寝心地を優先したい」のか、「寝心地はそこそこでも手軽さが一番」なのか、自分の性格を考えてみるのも良いでしょう。
ポイント7:複数人で使うなら「連結機能」
家族やパートナーなど、2人以上で車中泊をする場合に便利なのが、マット同士を連結できる機能です。
マットの側面にスナップボタンやベルクロ(マジックテープ)が付いており、複数枚を隙間なく繋げることができます。これにより、寝ている間にマットがずれて、間に体が落ちてしまうのを防げます。連結機能がないマットでも、大きめのボックスシーツで2枚まとめて覆ってしまう、という裏技もあります。
ポイント8:長く使うために「付属品と保証」
最後に、長く安心して使うためのポイントも確認しておきましょう。
- 収納袋(スタッフサック):付属の収納袋が、マットに対してギリギリのサイズだと、毎回しまうのが大変です。少し余裕のある作りの袋だと、片付けのストレスが軽減されます。コンプレッションベルト(圧縮用のベルト)が付いていると、さらにコンパクトに収納できます。
- リペアキット:インフレーターマットやエアマットには、パンク修理用のパッチや接着剤がセットになったリペアキットが付属していることが多いです。万が一の際に備え、付属しているか、また使い方は簡単かを確認しておくと安心です。
- メーカー保証:初期不良や、通常使用における不具合(バルブの破損や生地の剥離など)に対応してくれるメーカー保証があると、より安心して購入できます。保証期間や内容もチェックしておくと良いでしょう。
もっと快適に!車中泊マット活用術&豆知識
自分に合ったマットを手に入れたら、次はそれを最大限に活用して、さらに快適な車中泊空間を作り上げる番です。ちょっとした工夫や知識で、睡眠の質はもっと向上します。また、大切なマットを長持ちさせるためのメンテナンス方法も覚えておきましょう。
ワンランク上の快適性を目指す工夫
シーツやシュラフカバーを活用する
車中泊マットの上に直接寝るのではなく、必ずシーツや敷きパッドを一枚敷くことを強くおすすめします。理由は3つあります。
- 衛生的:寝ている間の汗や皮脂汚れをシーツが受け止めてくれます。マット本体を丸洗いするのは大変ですが、シーツなら気軽に洗濯できます。
- 肌触りの向上:好みの素材のシーツを使えば、寝心地が格段にアップします。夏は接触冷感素材、冬はフリースやフランネル素材などがおすすめです。
- マットの保護:生地の擦れや汚れを防ぎ、マットを長持ちさせることにも繋がります。
ボックスシーツを使えば、マットからずれる心配もありません。寝袋(シュラフ)を使う場合も、寝袋の内側が汚れるのを防ぐシュラフカバー(インナーシーツ)を使うと、寝袋の洗濯頻度を減らせて便利です。
「枕」は絶対に妥協しない
最高のマットを用意しても、枕が合わなければ快眠は得られません。マットで体の土台を整えたら、次は首と頭を支える枕にこだわりましょう。普段家で使っている枕を持っていくのがベストですが、荷物になる場合は、アウトドア用のコンパクトな枕(エアピローやウレタンピロー)を用意しましょう。衣類を丸めて枕代わりにするのは、高さが安定せず、首を痛める原因になることもあるので、最終手段と考えた方が良いでしょう。マットの厚みによってもちょうど良い枕の高さは変わってくるので、実際にマットの上で試してみて、首に負担のかからないものを選びましょう。
マットを敷く前の「段差解消」
厚みのあるマットでも吸収しきれないほどの大きな段差がある場合は、マットを敷く前にひと手間加えましょう。タオルケットやクッション、衣類などを隙間や窪みに詰めて、あらかじめ寝床全体をなるべく平らにしておくのです。この一手間が、寝心地を劇的に改善してくれます。特にシートとシートの間の隙間は、忘れずに埋めておきましょう。
大切なマットを長持ちさせるメンテナンス
お気に入りのマットは、適切にメンテナンスすることで、長く快適に使い続けることができます。
普段のお手入れと汚れの落とし方
使用後は、固く絞った濡れタオルなどで表面の汚れを拭き取り、しっかり乾燥させるのが基本です。特に、食べ物や飲み物をこぼしてしまった場合は、すぐに拭き取りましょう。洗剤を使う場合は、中性洗剤を薄めて使い、洗剤成分が残らないようにしっかりと拭き取ってください。アルコールやシンナーなどの有機溶剤は、生地を傷める可能性があるので絶対に使用しないでください。
長期保管の方法
マットの種類によって、適切な保管方法が異なります。これを間違えると、マットの寿命を縮めてしまうので注意が必要です。
- インフレーターマット:これが最も重要です。収納袋に入れたまま圧縮した状態で長期間保管すると、中のウレタンフォームが潰れたまま癖がついてしまい、復元力が著しく低下します。つまり、次に使うときに全然膨らまなくなってしまいます。長期保管する際は、必ずバルブを開けた状態で、広げておくか、ゆるく巻いて立てかけておくのが正解です。ベッドの下やクローゼットの隙間などを活用しましょう。
- エアマット:空気を完全に抜いて、付属の袋に入れて保管すればOKです。直射日光が当たらず、湿気の少ない場所に保管しましょう。
- ウレタンマット:折りたたむか、丸めた状態で大丈夫です。ただし、上に重いものを長期間乗せておくと、潰れた跡がついてしまうことがあるので注意しましょう。
パンクしてしまったら?慌てず修理
インフレーターマットやエアマットに穴が開いてしまった場合も、諦める必要はありません。付属のリペアキットを使って修理しましょう。
- 穴の特定:まず、どこから空気が漏れているのかを見つけます。マットを膨らませ、石鹸水を霧吹きなどで吹きかけると、穴の開いた場所からプクプクと泡が出てくるので簡単に見つけられます。水場がなければ、マットに耳を近づけて「シュー」という音を探したり、水に沈めてみたりする方法もあります。
- 補修作業:穴を見つけたら、その周りを綺麗に拭いて乾かします。リペアキットの説明書に従い、接着剤を塗ってパッチを貼り付け、しっかりと圧着します。
- 乾燥:接着剤が完全に乾くまで、数時間~一晩待ちます。焦ってすぐに空気を入れると、剥がれてしまう原因になります。
旅先での急なパンクに備え、リペアキットは常にマットと一緒に携行するようにしましょう。
【ケース別】マット選びの考え方|あなたのスタイルは?
最後に、車のタイプや車中泊のスタイル別に、どのような視点でマットを選べばよいのか、その考え方のヒントをご紹介します。これまでの情報を踏まえて、「自分の場合はどうだろう?」と考えながら読んでみてください。
車種別の考え方
軽自動車(N-BOX、タント、スペーシアなどのハイトワゴン系)
軽自動車での車中泊は、限られた空間をいかに有効活用するかが鍵となります。そのため、収納サイズが非常に重要な選択基準になります。寝心地の良い極厚マットは魅力的ですが、それだけで荷室が埋まってしまっては本末転倒です。コンパクトに収納できるエアマットや、厚さ5~6cm程度のインフレーターマットが現実的な選択肢になるでしょう。また、助手席を倒して寝床を作る場合など、シートの凹凸が大きくなりがちなので、ある程度の厚みは確保したいところです。まさに「寝心地と収納性のせめぎ合い」が最もシビアな車種と言えます。
ミニバン(セレナ、ヴォクシー、ステップワゴンなど)
ミニバンは車中泊において非常に人気の高い車種です。室内が広く、2列目・3列目シートを倒せば広大なフラットスペースを作りやすいのが魅力です。この広さを活かして、寝心地を重視した厚手のマットや、ダブルサイズのマットを導入しやすいでしょう。ただし、「フルフラット」と言っても、シート間の隙間や微妙な段差は必ず存在します。それらをしっかりカバーできる厚み(8cm以上がおすすめ)があると、ホテルのような快適なベッドが完成します。連結機能を使えば、家族全員で川の字になって寝ることも可能です。
SUV(RAV4、ハリアー、エクストレイルなど)
SUVは荷室の使い勝手が良く、アウトドアシーンによく似合います。しかし、マット選びでは注意点も。後部座席を倒した際の荷室長(奥行き)が、意外と短い車種も多いです。自分の身長と比較して、十分な長さが確保できるか、マット購入前に必ず確認しましょう。また、荷室と倒した背もたれの間に段差や傾斜ができやすいので、その補正も考慮に入れる必要があります。マットの長さが足りない場合は、フロントシートとの間に荷物を置いてスペースを延長するなどの工夫も有効です。
シチュエーション別の考え方
ソロ車中泊
一人での車中泊は、自由気ままで最高ですよね。荷物も自分の分だけなので、比較的スペースに余裕があります。全てを自分の好みで決められるので、寝心地に全振りした極厚マットを選ぶもよし、準備・撤収の速さを重視してウレタンマットを選ぶもよし。フットワークの軽さを重視するなら、コンパクトなエアマットという選択肢もあります。自分の車中泊スタイル(釣りや登山の前泊がメインか、のんびり旅がメインかなど)に合わせて、最も優先したいポイントを決めると、マットも選びやすくなります。
ファミリー・ペア車中泊
複数人での車中泊では、スペース効率と協調性がテーマになります。シングルマットを人数分揃える場合、連結機能があるかどうかは非常に重要です。連結機能がないと、マット同士の隙間に子どもがハマってしまう…なんてことも。また、車内幅いっぱいにマットを敷き詰めたい場合は、マット2枚の合計幅が、車の室内幅に収まるかをしっかり計算しましょう。準備や片付けも、一人で行うより時間がかかります。電動ポンプ付きのエアマットや、バルブが大きく空気の抜き入れが楽なインフレーターマットなど、時短に繋がる機能もチェックしたいポイントです。
まとめ|完璧なマットより、「あなたに合うマット」を
ここまで、車中泊マットの種類から選び方のポイント、活用術まで、本当にたくさんの情報をお伝えしてきました。もしかしたら、情報が多すぎて逆に混乱してしまったかもしれませんね。
でも、一番伝えたかったのは、たった一つのシンプルなことです。それは、「すべての人にとって完璧な、最高の車中泊マットというものは存在しない」ということです。
収納性を重視すれば寝心地がある程度犠牲になり、寝心地を追求すれば収納性や手軽さが失われます。ある人にとって最高のマットが、あなたにとっても最高とは限りません。
大切なのは、この記事で得た知識を元に、
- 自分の車はどんな特徴があるのか?(広さ、凹凸)
- 自分はどんな車中泊がしたいのか?(季節、頻度、人数)
- 自分が何を一番優先したいのか?(寝心地、手軽さ、積載性)
という「自分だけの判断基準」をしっかりと持つことです。
その基準さえ持っていれば、いざお店やネットで様々な製品を前にしても、情報に惑わされることなく、冷静に自分に合った一枚を見つけ出すことができるはずです。
車中泊マットは、あなたの旅を、もっと自由に、もっと快適にしてくれる最高の相棒です。この記事が、あなたが最高の相棒と出会うための一助となれたなら、これほど嬉しいことはありません。さあ、自分だけのマットを見つけて、素晴らしい車中泊の旅に出かけましょう!


